大島僚太とU23日本代表の間に一体 なにが起きたのか Vol.2

絶対的なレギュラーとして手倉森監督の信頼を得ていた、今季から川崎フロンターレで10番を背負うことの決まっている大島僚太が、リオ五輪最終予選を経て唯一評価を下げた選手になってしまいました。今回はVol.2。

 Vol.1はこちら

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オリンピック予選でも露見した大島僚太の短所

大島の長所はvol.1で述べたとおり、ボールキープ力を軸とした攻撃面にあります。一方の短所はやはり守備能力です。このエントリーで僕は大島の守備意識の改善を書きました。 

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しかし、オリンピック予選で見せたディフェンス時の彼のプレーは、残念ながら代表レベルには遠く及びませんでした。厳しく言えばインサイドハーフの選手があのレベルでは、格上のチーム例えばブラジル代表を相手にした場合、チームが崩壊してしまう、そんなレベルだったと僕は思います。

確かに意識は変わっていました。他の選手同様、守備時には必死で走っていました。ただ、俗に言う球際があまりに軽い。それは体格の問題ではなく、やはり意識の問題です。韓国代表を相手に大島は必死にボールを追いました。相手に全力でプレスをかけた場面もありました。しかし、最後の最後には足先だけで取りに行ってしまう。ボールを取れればいいですが、取れなければ相手は態勢も崩さず一気に局面を打開できてしまう、大島が攻撃で作りたい場面を相手に供給してしまうという場面が散見しました。 

 

U23日本代表に戦術の変化はあったのか

A代表の監督が2014年ワールドカップでの惨敗後ザッケローニからアギーレを経てハリルホジッチへと遷移する一方、2014年1月に手倉森監督がこのチームの監督に就任します。もともと、選手の特性を活かしつつもベースには全員守備の戦術を敷く監督でしたので、現在のU23代表のディフェンスの戦術が過去から大きく変化したわけではありません。

変化したのはオフェンスの部分でした。攻撃面で変化したのは縦への意識です。A代表に例えると解りやすいかと思いますが、ザッケローニ時代のボールキープに執着した戦術を経て、今のハリルホジッチのA代表では無謀と称されてしまうほど縦を強く意識したサッカーが行われています。U23代表も攻撃面での戦術は強くその影響を受けています。(従来の日本代表は年代を問わずポゼッションを重視し、ボランチでゲームを作るというサッカーをしていた訳ですが、今の日本のサッカーはそこを脱却するということを志しています。アジアというぬるま湯で王様サッカーをしていても、世界では戦えないからです。)

その変化に順応できず大島は取り残されてしまいました。今、述べたのは攻撃の戦術ですが、彼は守備の部分においても悪い意味で目立つ存在となってしまったわけです。

 

オフェンスの戦術変化が日本代表のディフェンスにどう影響を与えたか

上述の通り、オフェンスの戦術変化はU23日本代表においても顕著でした。ボールを奪った時、従来のボランチ(ゲームメーカー)探しは過去のものとなり、ゴールへのアクションを起こしている選手を探すことが第一の選択肢へと変化しました。

攻撃時の縦へのスピードアップはゴールへの近道である反面、ミスの確率を高めます。ミス(相手にボールを奪われること)が多いということはディフェンスの回数が増えるということです。つまり、大島にとって不幸だったのは、オフェンス時はボールがボランチを飛び越えていくという戦術がとられ、それは同時に彼の苦手とするディフェンスの回数を増やすことも意味していたことです。彼の長所を消し、短所を目立たせる戦術が敷かれた結果が、彼の評価を落とす主要因だったと考えます。

 

チームプレーそして個の能力とは

もともと川崎フロンターレのサッカーはボールキープを重視したサッカーなのですが、縦への意識は日本代表と同じく強いです。しかし、U23日本代表との違いはパスの距離感です。リオオリンピック予選を通じ大島のポジショニングは、他の選手の視界の先よりだいぶ手前に位置していました。フロンターレなら受けられる位置ではボールが通り過ぎてしまう。そんな中、自分のリズムを作れずに攻撃においても彼は消えて行きました。

ただし、今回の大島に対して同情するつもりはありません。大島にチームが合わせるのではなく、彼がチームに順応しなければならないからです。(マンチェスターユナイテッドでの香川への同情に僕は否定的です。出場した選手は監督の戦術に順応すべきであると思うからです。逆に監督を変えるのは選手のプレーです。香川が輝けば香川に合う戦術が敷かれていたはずです。)

大島僚太の持つ能力は高いです。しかし、このまま輝くことがなければ五輪代表から消えていくことになるでしょう。チームの流れを変える(自分の方に傾ける)には手段を問わず今ある状況で輝かなければいけません。本田圭佑がそうであったように、彼も今の環境で勝たなければいけないと僕は思います。